1.4. 科学のプロセス
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生物学は生命を科学的に研究する学問
「生命とは何か」
「科学とは何か」
自然を理解するのに科学と他の手段でどんな違いがあるか
科学 science
知るというラテン語に由来
疑問(探求)に基づいて物事を知る1つの方法
知りたいという基本的な欲求は2つの科学的アプローチになって現れる
発見型の科学
自然現象を主に記述する
仮説検証型の科学
自然現象を主に説明する
殆どの科学者はこれら2つの探索形式を組み合わせて実行している
発見科学
科学者は自然現象の自然要因を探求する
直接または間接的に、観察もしくは測定できるような研究に科学の範囲が限定されてくる
他人が確認できる観察に基づいた科学は、自然の謎を解き、超自然的な盲信と区別される
科学は天使や幽霊、神々、霊魂が善か悪かを問わず、嵐や虹、病気、回復を引き起こすということを認めもしないし否定もしない
このような説明は科学の守備範囲の外にあるから
検証できる観察と測定は発見科学 discovery scienceのデータである
自然を正確に記載する探求によって、その構造を発見する
生物学においては、発見科学は生態系から細胞や分子までさまざまなレベルで生命を記述することができる
ダーウィンが南米で収集した多様な植物や動物の注意深い記述
ヒトゲノムの配列決定
発見科学は、帰納法とよばれる論理学に基づいて重要な結論に到達できる
膨大な観察をまとめて一般化すること
「すべての生物は細胞でつくられている」は1例
この結論は、2世紀の間、生物学者が顕微鏡を用いてあらゆる生物標本を観察し、発見したことに基づいている
発見科学の注意深い観察とそこから時々得られる帰納的結論は自然に対する我々の理解の基本
仮説に基づく科学
科学的方法 scientific method
観察
疑問
仮説
予測
実験
実験が仮説を支持しない
仮説を修正する
新しい仮説を考える
実験が仮説を支持する
さらに予測を行い、検証する
理想的にはこのような科学的方法を利用する
実際の研究者はこれを厳密にたどるとは限らない
異なる科学者は異なる科学的手法で研究をすすめる
近代的な研究のほとんどは仮説に基づく科学 hypothesis-driven scienceといわれる
仮説 hypothesis
一群の観察に対して提起される説明の1つであり、試みのアイディアである
例. キャンプ生活をするときに懐中電灯がつかない(観察)
過去の経験に基づいたもっともらしい仮説は、その電池が空になっているというもの
一度仮説が立てられれば、人はこれを検証するために演繹論理を使うことができる
演繹
一般論→個別
e.g. もしすべての生物が細胞でできており(前提1)、ヒトも生物である(前提2)とすれば、ヒトも細胞で構成されているだろう(特定の場合への演繹的予測)
科学のプロセスにおいては、演繹法では、特定の前提が正しい場合に期待される実験結果もしくは観察はどんなものになるかを予測する、という形をとることが多い
次に我々は実験を行い、その結果が予測されたものかどうかを見て、その仮設を検証する
この演繹的検証は「もし……であれば、その場合」という論理をとる
対照を含む実験 controlled experiment
実験群を対照群と比較するようにデザインされている
トランス脂質の研究はよい例
理想的には、対照群と実験群は1つの変数のみ異なるのがよい
別の因子を2つの群で一致させると、対照群は調べようとする変数以外のすべてすべての変数の効果を打ち消してくれる
科学における学説
多くの人々は事実と科学を結びつけるが、事実の蓄積は科学の主要なゴールではない
確認できる観察や再現可能な実験結果という事実が科学の必須条件であることは確か
しかし、科学を本当に進歩させるものは、それまで関係がないと思われていた多数の観察を1つにつなぐ新しい学説である
科学の基礎は非常に多様な現象に応用できる解釈
ニュートンや、ダーウィン、アインシュタインのような人々は科学の歴史で突出しているが、それは非常に多くの事実を発見したからではなく、彼らの学説が適用範囲の広い説明の力をもつから
学説 theory
仮説よりもはるかに適用範囲が広い
仮説:「白い毛はホッキョクグマが極地方で生きていくことに役立つ進化的な適応である」
学説:「自然選択によって適応進化が起こる」
学説は非常に包括的なので、多くの様々な証拠の蓄積によって支持されて初めて、科学において広く受け入れられるようになる
科学の学説という用語は、豊富な証拠によって支持される包括的な説明に対して用いられるが、それと対照的に、日常用法としての説はむしろ想像や仮説に近い
科学的学説はもちろん「自然を知る」唯一の方法ではない
比較宗教学の講義では、多様な宗教が地球とその生命の超自然的な創造を語ることを学ぶことができる
科学と宗教は非常に異なった方法で自然の意味を明らかにする
芸術も別の方法である
科学の文化
同じ質問を異なる科学者が発することは珍しいことではない
このようなことは科学が進歩し自己修正できる性質につながる
科学者はそれまでの研究で明らかになっていることに基づき、同じ問題に取り組んでいる同時代の科学者に強い注意を払っている
協力と競争はともに科学の文化を特徴づけている
同じ研究分野で仕事をしている科学者は別の人の仕事を注意深く精査する
科学者が他人の結論を、追試実験で確認しようとすることはよくあること
科学者は一般的に疑い深い
科学には他の探求スタイルと違う2つの鍵となる特徴があることをみてきた
他人が確かめることができる観察や測定に基づいていること
考え(仮説)は他人が追試できる実験によって検証できること
科学と技術と社会
科学と技術は相互に依存している
science and technologyは日本では科学技術と訳される事が多いが、本来はこのように両者を対比した用語
50年以上前(1953年)に、ジェームズ・ワトソン James Watsonとフランシス・クリック Francis Crickは科学のプロセスを経てDNAの構造を発見した
この発見はやがて、たとえばヒトのインスリンの大量生産のための微生物の遺伝子操作や犯罪捜査のDNA検査のような様々なDNA技術に発展した
計画的な応用研究は、基礎科学を突き動かす好奇心にはそれほど依存することはなく、むしろ人類の現在の要請や文化的雰囲気の変化に依存している
技術は多くの面で我々の生活水準を改善してきたが、しかしこれは両刃の剣
地球の人口は過去3世紀で10倍以上に増加し、過去40年間に2倍以上の66億人にまで増加した
その結果として地球環境はしばしば荒廃してきた
今や、科学と技術は社会の強い力となっている
→ 1.5. 科学のプロセス : トランス脂質は健康に悪いか